研究概要 |
近年,古くから安価で安全な添加物として知られるウシラクトフェリンに関して,新しい生物学的作用((1)創傷治癒促進作用,(2)骨増生作用,(3)消炎・鎮痛作用)が報告されている。現在,国内外のラクトフェリン研究の多くは全身投与による効果のみに着目し,局所投与による効果に着目しているのは米国で臨床治験中の糖尿病性壊疽治療薬のみである。本研究の目的は,ウシラクトフェリンを応用した抜歯窩治癒促進材を開発するため,実験動物を使った基礎データを得ることである。平成20年8月1日付けで研究代表者が現所属機関に赴任したため,実験計画(動物実験施設およびマイクロCT等の測定機器の利用)に若干の変更が生じた。平成22年度の研究では,全身麻酔下で4週齢のWistar系雄性ラットの下顎右側第一臼歯をペントバルビツールの腹腔内投与下で抜歯した。抜歯後,A群:抜歯のみで何も挿入しない,B群:抜歯窩にペプシン可溶化コラーゲンスポンジを挿入,C群:抜歯窩にウシラクトフェリン(10mg/ml)を含有するペプシン可溶化コラーゲンスポンジを抜歯窩に挿入,の処置を行い,抜歯7日後に下顎骨標本を採取した。採取した下顎骨標本は,平成22年9月に愛知学院大学歯学部ハイテクリサーチセンターに出向き設置されているマイクロCTにより全ての標本の撮像を完了した。平成23年1月には3次元解析ソフトウェアを使ったデータ解析法の習得を目的にソフトウェア本社に出張し,2月から愛知学院大学歯学部ハイテクリサーチセンターに出向き4日間かけてすべての標本について抜歯窩内の石灰化度が低い骨の体積を計測した。これらの作業に平行して,撮像が完了した標本については組織切片を作製し,現在,鏡検・分析中である。
|