研究概要 |
本年度は、ヒト歯根膜から回収した細胞からFACSで分取したCD271+/CD90+の細胞をsingle cell cultureし、間葉系肝細胞(MSC)の特徴を有するクローンを獲得する試みを行い、以下に示す結果を得た。 (1) ヒト歯根膜から回収した細胞における種々のMSCマーカーの発現の確認:ヒト歯根膜からコラゲナーゼ処理で回収したPI-細胞中における、CD90以外のMSCマーカー(CD146, CD166, CD105, CD73, CD271, CD49f)の陽性細胞率は低かった。また、このPI-細胞は、効率良く骨芽細胞と軟骨細胞に分化したが、脂肪細胞への分化能を有する細胞はヒト骨髄MSCと比較して著しく少なかった(全細胞中の0.26%)。 (2) ヒト歯根膜からのCD271+/CD90+細胞の回収とCFU-F形成能の評価:3つのPDL cellsのPI-細胞中には、CD271+/CD90+細胞が平均5.62%存在していた。そこで、FACSで分取した4分画の細胞を其々96wellプレートでsingle cell cultureすると、CD271+/CD90+細胞は高いCFU-F活性を示した(CFU-Fを形成したクローン数:平均14.3個)。また、CD271+/CD90+クローンの内、平均9.3個のクローンはP3まで増殖能を維持していた。さらに、PI-細胞では、MSC様(骨芽細胞、脂肪細胞、軟骨細胞への分化能を有する)のクローンは認められなかったが、CD271+/CD90+細胞では、平均2.7個のクローンがMSC様であった。また、このMSC様クローンは、P0-P3までほぼ一定の増殖を示した。 以上の結果から、CD271とCD90は歯根膜からMSCを純化するためのマーカーになり得ると考える。
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