研究概要 |
歯周組織にガレクチンー1が局在していることはすでに明らかにしてきたが、その歯周組織に歯周菌P.gingivalisを作用させると歯槽骨の脱落が進行するのと同時にガレクチンー1のmRNAの発現が上昇していることがRT-PCR法による解析で明らかとなった。このガレクチンー1の発現上昇が歯周菌による歯周病の進行を抑制する可能性があるかどうかをin vitroの炎症モデルを用いて検証を平成20年度より進めてきた。我々はラット腹腔よりマクロファージを取り出して無血清液中で培養し、LPS(Lipopolysaccharide)を作用させてその機能を高進させた状態にさせ、歯周組織で起こっている炎症性変化の1つである歯周病のin vitroモデルとして用いた。RT-PCRによる解析で無血清培養液中で100ng/mlのLPSを培養中のマクロファージに作用させると3種類のpro-inflammatory factor(IL-1β,IL-6,iNOS)のmRNAの有意な発現上昇が見られ、10ng/mlの酸化型ガレクチンー1を作用させるとその上昇が有意に抑制された。このサンプルを更にreal-time RT-PCR法により定量解析した行った結果、RT-PCRと同様にLPSによるpro-inflammatory factorの発現上昇とそのLPSによる発現上昇が酸化型ガレクチンー1同時投与により抑制されることが統計的に有意であることが明らかとなった。現在10%血清を含む培養系でLPSによるpro-inflammatory factorを強く発現させたマクロファージに対し3種類の酸化型ガレクチンー1濃度(0.1ng/ml,1ng/ml,10ng/ml)を作用させその発現抑制効果の濃度依存性をreal-time RT-PCRで検討中である。現在までの結果は、歯周菌を暴露された歯周組織中では歯周菌から分泌されたLPSによりマクロファージ内のpro-inflammatory factorのmRNA発現が上昇し、その上昇を歯周組織内で発現上昇したガレクチンー1が抑制している可能性を示唆している。
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