研究概要 |
血清アミロイドA(SAA)は,急性炎症性タンパクであり,我々は,動脈硬化症易形成性マウスの周病原菌感染モデルにおいて,肝臓でのSAAのmRNA発現上昇を検出した.さらに,マウスの歯周組織にIL-6を注入した場合,肝臓でのSAAのmRNA発現,血中SAAの上昇を確認している.この結果は,歯周組織中のサイトカインが血中に移行して,肝細胞を刺激し,SAAの産生上昇をきたすことを示している.しかし,現在,SAAの産生上昇による動脈硬化症の発症,悪化は確認されていない.そこでSAAが,心臓血管疾患の原因となる動脈硬化症の発症,増大に関与しているか否かを検討し,両疾患の関連機序,SAAのマーカーとしての役割を明らかにするのが本研究の目的である. 上記の目的を達成するために平成21年度に以下の実験を行った. 1.実験動物:ApoEノックアウトマウスは,The Jackson Laboratoryより,オリエンタル酵母工業株式会社バイオ事業本部を通じて雄雌のペアを4ペア購入し,当施設で繁殖させている.現在まで30匹の子供が生まれ,メイトを繰り返し,実験に供している. 2.実験経過:ApoEノックアウトマウス,C57BL6Jコントロールマウスとも腹腔内IL-6投与群,PBS投与群に分け,投与後1日,1週,4週,8週で各ステージ4匹ずつ屠殺し,大動脈での動脈硬化程度,血中SAA濃度,肝臓におけるSAA遺伝子発現を観察,計測している.マウスの全データが揃うのは平成22年8月頃であるが現在まで順調にIL-6投与により動脈硬化症が発症,悪化している所見が得られている.
|