研究概要 |
歯周病と動脈硬化症の関連性に関する血清アミロイドA(SAA)の寄与程度を検索するのが本研究の目的である. 上記の目的を達成するために平成22年度に以下の実験を行った. 1. 実験プロトコール:ApoEノックアウトマウス120匹を,腹腔内IL-6投与群,PBS投与群に分け,投与後1日,1週,4週,8週で各ステージ12匹ずつ屠殺し,肝臓におけるSAA遺伝子発現,血中SAA濃度,大動脈での動脈硬化程度を観察,計測した. 2. 肝臓でのSAAmRNAの発現:IL-6投与群は1日で著明に上昇,その後減少し,1,4,8週経過時には発現は見られなかった.PBS投与群では全期間,発現は見られなかった. 3. 末梢血中SAA濃度:IL-6投与群は1日で著明に上昇,その後減少し,1,4,8週経過時には見られなかった.PBS投与群では全期間見られなかった. 4. 動脈硬化症の発症,進行の検索:心臓から鼠径部までの胸部大動脈の内面を開いてOil red-O染色にて動脈硬化病巣面積比率を求めた結果,IL-6投与群はPBS投与群と比較して,4週経過以後に脂肪沈着率が増加,有意差を認めた. 以上より,IL-6の腹腔内投与でApoEノックアウトマウスのSAAはmRNA量,タンパク量ともに発現が上昇し,脂肪沈着量は増大するという結果を得た.この結果から,Low grade inflammationである局所の歯周病により産生されるIL-6刺激で,肝臓でのSAA産生が上昇,血中に増加することにより動脈硬化発症を誘導することが示唆され,2度の学会発表を行った.現在論文を作成中であると同時に,SAAのアテローム形成機序は未だ不明であるため,今後,大動脈および心臓の組織にてSAAおよびSAAレセプターを免疫染色することにより,動脈硬化症に対する作用機序をより詳細に解明していく予定である.
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