以前の研究で15mg/mL濃度(1.5%)の合成ペプチド(WYQNMIR)を徐放性効果のある基材としての歯科用アルジネートとともにラット背部皮下に接種した結果、14日後に軟骨形成と軟骨内骨化を認めたが、異物反応が経時的に認められた。そのため徐放性効果のある基材としてポリエチレングリコールを用い、同濃度の合成ペプチドをSprague Dawleyラットの歯周組織欠損部に適用した。すなわち、ラット上顎第一・二臼歯口蓋側に粘膜上皮、粘膜固有層および骨膜の全層弁を形成して注水下で第一臼歯口蓋側近心隅角部から第二臼歯遠心隅角部までの歯槽骨、歯根膜および歯根表面に直径1mmのラウンドバーを用いて削除し、両頭チゼルで削除歯根表面を掻爬し歯周組織欠損を形成した。合成ペプチドを貼付後経時的に組織を採取し、通法により、パラフィン切片を作製し、観察した。5日では削除歯根面付近では上皮の肥厚、歯肉溝底から歯槽骨にかけてフィブリンの析出、線維芽細胞の増生があり、その細胞の形態は紡錘形ないし長楕円形を呈し歯根面に平行または接していた。14および21日後では、数例に歯根面から直接、硬組織の形成がみられた。硬組織の周囲は細胞質の豊富な多角形の細胞で縁取られている箇所とそうでない箇所があり、硬組織内には細胞の封入が一部にみられ、硬組織のリモデリングも認められた。また、硬組織の周囲から線維の埋入は直角ないし斜め方向にみられた。また、硬組織の形成は歯根表面の欠損が表在性よりも深在性にみられる傾向があり、それがペプチド依存性かどうかは今後の課題である。
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