旧タイプのエムドゲインをin vivoで適用して得られた物質のMALDI-TOF解析を基に合成ペプチドを作製した。それをラット歯周組織の欠損部に応用して組織の反応性を明らかにした。合成ペプチドの量は以前のin vivo研究で硬組織が形成された結果を基に決定している。7週齢のSD系ラットの上顎第一臼歯口蓋側に全層弁を形成したのち、歯頸部にラウンドバーを用いて人工的組織欠損を形成し、その部にプロピレングリコールアルジネート(PGA、15mg/mL)水溶液に1.5%濃度になるように合成ペプチド(WYQMNIR、15mg/mL)を溶解し、0.3mLをシリンジで貼布した。対照として同濃度のPGAのみを貼布した。その後、全層弁を元の位置に復位し、吸収性縫合糸で1糸縫合し、以前の研究を基に今回は、術後1週および2週の組織反応を重点的に検討した。ホルマリン溶液で灌流固定し、組織を一塊として採取し、通法によって切片を作製し、ヘマトキシリン・エオジン、マッソン・トリクローム、Periodic Acid Schiff、トルイジンブルーの各染色を行い、検鏡した。術後1週の対照群では、組織欠損部に細胞の多い肉芽組織がみられ、術後2週では細胞は減少し、線維化傾向が認められた。実験群の術後1週の欠損部付近のセメント質および歯根膜から線維性結合組織が欠損部に向かって形成されていた。その近辺の露出象牙質の表面は破歯細胞によって吸収されていた。欠損部歯槽頂には骨組織が形成されていた(9/11)。術後2週では欠損部の象牙質表面および歯槽骨頂部に硬組織(2/18)、および欠損部の歯槽骨頂部のみに硬組織(3/18)が形成されていた。他の例では対照群と同様の所見で硬組織形成はみられなかった(13/18)。以上のことから合成ペプチドは歯周組織欠損部に硬組織形成を誘導するポテンシャルを有することが示唆される。
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