歯周組織の再生療法にはGTR法やエナメルマトリックスデリバティブ(EMD)法が用いられているが、市販のEMDは生物由来であるので、未知の物質を含んでいる可能性もある。それを払拭するには人工的合成物質を利用するのが望ましい。そのためにEmdogain^<(R)>のin vivo実験のMALDI-TOF解析により得たアミノ酸シークエンスを基に作製した合成ペプチド(WYQNMIR)を用いた(特願2007-235789)。このペプチドを1.5%プロピレングリコールアルジネート(PGA)水溶液に15mg/mLの濃度になるように溶解した。7週齢の雄性SD系ラットの上顎第一臼歯部の口蓋側の歯周組織に全層弁を形成して、ラウンドバーを用いて歯頸部に人工的欠損部を作製した。その部位に前述のPGA水溶液を0.3mL貼布したのち、全層弁を復位して縫合した。その部位の組織を一塊として経時的に切除し、歯周組織の変化を光顕的および一部、電顕的に観察した。対照として合成ペプチドを含まない0.3mLPGAを用いた。その結果、術後7日には欠損部付近のセメント質および歯根膜から線維性結合組織が上皮方向に向かって増生していた。また、露出象牙質面には破歯細胞が存在し、象牙質を吸収している像が観察された。欠損部歯槽頂には立方形の細胞で縁どられた、不定型の骨様組織の小塊もみられた。また、電顕的に硬組織に接して細胞内小器官の比較的多い細胞も認められた。術後14日には、欠損部の象牙質表面にセメント質様硬組織が形成されていた。他の例では、欠損部の象牙質表面から外方向性に連続性に、象牙質様あるいはセメント質様硬組織の形成が認められた。術後14日の硬組織の認められない例では、対照群と同じ組織像を示した。以上のことから、合成ペプチドは歯周組織の欠損部に硬組織形成を誘導する可能性があることが示唆される。
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