現在では多くの歯科医院が、短期的な治療予後だけでなく、中・長期的な展望に立って治療計画を立案することが多くなってきている。しかしながら、受診患者のある者は、治療中断に至ることをしばしば経験している。そこで今回、歯科受診者を対象に、治療を継続している患者と治療を中断した者との間に、QOL指標などに差異が認められるかどうかを解析し、また治療中断に至る患者の背景因子の探索を行うこととした。 全国の一般歯科医院26施設において、40歳以上の受診者3334名をリクルートし、(1)質問票による包括的QOL尺度(SF-8)、口腔関連QOL尺度(GOHAI)、抑うつ尺度(GHQ)、生活習慣、口腔清掃習慣、社会的因子などの採取、(2)診療録からのDMFT、歯周病関連指標、アイヒナー分類などの収集、などからなるベースライン調査を行った。 追跡調査期間中に来院した対象者(治療継続患者)は2168名(65.0%)で、このうち2041名(94.1%)から質問紙が回収された。調査期間中に来院しなかったか治療を中断したため質問紙が回収できなかった者(治療中断者)は1166名(35.0%)で、郵送調査によって369名(治療中断者の31.6%)から質問票が回収された。 治療中断者には若年層が多く、残存歯数の多いものが多かった。ベースライン時点の治療段階では、初診の患者が最も頻繁に脱落したが、メインテナンス中の者でも33%が調査期間中に来院しなかったか治療を中断していた。ベースライン時点では、初診患者に低値を示す包括的QOLの下位尺度が見られるが、おもに全身的健康観や精神的な尺度であった。メインテナンス患者で中断した者は、身体面と活力の下位尺度が改善していた。
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