研究概要 |
現在の歯科治療では、歯冠の修復や疼痛の改善などの急性期の治療を終えた後、長期的なメインテナンスをともなう治療計画を立案することが多くなってきている。しかしながら、メインテナンス治療が患者の口腔の健康維持に必須のものであるのか、患者の口腔の健康のQOLの維持に貢献するところがあるかどうかは、比較対照試験によって明確に示されているわけではない。今回の研究では、歯科医院を受診している患者を1年間追跡し、ベースライン調査の時点でメインテナンス治療であった患者が1年後の追跡調査時にどのようなQOLを呈しているか、とくに高齢の患者における口腔関連QOL尺度の推移を調べるものとした。全国26の歯科診療所を受診した40歳以上の4,317名のうち、文書による同意の得られた者について、口腔診査と口腔衛生習慣、口腔関連QOLの採取を行った。12か月後に同様な調査を行い、1,959名の追跡を行った。その結果、62%の患者では口腔関連QOLが維持あるいは改善されており、追跡期間中にQOLの低下を呈した者は38%となった。歯科医院を継続的に受診している集団における口腔関連QOLの低下は、高齢、現在歯数が少ない、クリーニングのために頻回に歯科医院を受診、抑うつの傾向がある、といった者にみられる可能性が示唆された。定期的に歯科医院を受診している場合においても、高齢者には口腔関連QOLの低下が発生しやすく、歯科治療には注意を要する必要性があると思われた。
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