研究課題/領域番号 |
20592448
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小野寺 大 東北大学, 大学院・歯学研究科, 大学院非常勤講師 (80312594)
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研究分担者 |
庄司 憲明 東北大学, 病院, 講師 (70250800)
福元 隆浩 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教 (50433024)
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キーワード | セロトニン / 下行性疼痛抑制系 / 慢性痛 / 抗うつ剤 / 三叉神経脊髄路核尾側亜核 / 延髄大縫線核 |
研究概要 |
近年、非定型歯痛、舌痛症などの慢性痛患者は増加傾向にあり社会問題となっている。しかしながら、慢性痛に対する治療法は確立されておらず、診断および治療法の開発を目指した慢性痛発症メカニズムの解明は急務である。最近、三叉神経領域に起こる慢性痛を訴える患者様に対しSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が鎮痛効果をもたらすとの報告から、慢性痛の制御に延髄大縫線核のセロトニン作動神経細胞の軸索が下行性に三叉神経脊髄路核に投射する「下行性疼痛抑制系」の賦活が重要であることが示された。私たちは既にラットオトガイ神経(三叉神経第III枝)の電気刺激により、三叉神経脊髄路核に非刺激側に比べて高密度なセロトニンが発現すること(下行性疼痛抑制系の賦活)を観察していたので、本研究ではこの人為的な下行性疼痛抑制系の賦活が慢性痛に及ぼす影響について動物実験で検証し、新たな慢性痛治療の臨床応用を目指すことを目的とした。 その結果、神経結紮(CCI:Chronic constriction injury)により閾値の低下がみられた慢性痛モデル(結紮一週間後)において、結紮側と同側のオトガイ神経を電気刺激することにより刺激の12時間後に逃避閾値の上昇がみられた。この時電気刺激側と同側の三叉神経脊髄路核にセロトニンの強発現が惹起されたことから、慢性痛モデルに対する急性痛付加が下行性疼痛抑制系を賦活し、一時的に慢性痛を軽減することが示された。今後更にこのメカニズムについて詳細に検討する予定である。また、カプサイシンの舌注入刺激により注入側と同側の三叉神経脊髄路核にセロトニン発現が惹起されたことから、TRP(transient receptor potential protein)V1受容体刺激を介した下行性疼痛抑制系の賦活の可能性が示唆された。
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