研究概要 |
retinoic acid early inducible gene-1(RAE-1)は分子量約30kDaの膜タンパク質で,細菌感染,癌化等により発現が誘導されるストレス誘導性タンパク質である.しかし骨芽細胞がRAE-1を発現するのか否か,生理的作用や疾患への関与については全く不明である.そこで今回骨芽細胞におけるRAE-1の発現制御機構の検討を行なった. 10日齢雄性マウス大腿骨を脱灰後凍結切片を作製し,RAE-1の免疫染色を行なった.また骨芽細胞様細胞MC3T3-E1細胞は,10%FBS含有α-MEMにて培養し,経時的に骨分化マーカーおよびRAE-1をRT-PCRあるいはリアルタイムPCR法にて検出した.さらに血清不含α-MEMにて種々の濃度(0〜30ng/ml)のLPSを添加しRAE-1の発現を検出した. 10日齢マウス大腿骨において,大腿骨内部の骨芽細胞にRAE-1陽性細胞が認められた.MC3T3-E1細胞はRAE-1δとεを強く発現し,分化誘導培地にて培養すると細胞外基質の形成が盛んな時期にRAE-1を強く発現していた.またMC3T3-E1細胞をLPSにて処置すると,処置後12時間10ng/mlの濃度においてRAE-1の発現が最大となった.これらの結果は,骨芽細胞がRAE-1の発現能を備え,また骨芽細胞においてもRAE-1がストレス誘導性タンパク質としての機能,つまり細菌感染などによるRAE-1の誘導が,免疫細胞の遊走・定着の発端,組織の崩壊に関与している可能性を示唆しているのかもしれない.
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