本研究の目的は、フッ化物製剤の局所応用や機能性食品の摂取など、歯科疾患のリスクを低減させる化学的プラークコントロールの効果を、歯垢細菌叢のコントロールという観点から評価することの有効性を検討することであった。 本年度は、昨年度に開発した電子プローブマイクロアナライザを用いてバイオフィルムの厚みを測定する方法を用いて、ジェット水流による口腔バイオフィルム除去効果の定量的評価を継続して検討した。インフォームドコンセントを得た被験者30名(18-35歳)の上顎大臼歯頬側面に、1対の健全なエナメル質スラブ(4mm^2)を組み込んだ歯垢採取装置を取り付け、2日間その部位の清掃を中止し、バイオフィルムを堆積させた。装置を回収後、水流圧洗浄器(デントレックス、リコーエレメックス)のノズルを一方のスラブに対して約3mmの間隔で垂直に固定し、5秒間洗浄した。装置の洗浄は、707、350または120kPaの水圧でランダムに行った。もう一方は未洗浄のまま対照とした。スラブは直ちに凍結乾燥させ、スラブ表面を白金でコーティングした後、試料面の二次電子像を撮影した。次に、そのスラブをメタクリル酸メチルで包埋し、スラブ中央部の断面を露出させた。鏡面研磨後、カーボン蒸着を行い、反射電子像を撮影した。反射電子像上のエナメル質とバイオフィルムの最外層を示す白金の薄層で挟まれた面積を画像解析ソフトで測定し、バイオフィルムの平均厚さを算出した。対の洗浄スラブと対照スラブの厚さの差から、バイオフィルムの除去率を算出した。対照群のバイオフィルムの厚さ(mean±SD)は16.5±13.6=mであった。ジェット水流による平均除去率は、707kPaで85.5±11.4%(p<0.05)、350kPaで85.1±7.2(p<0.001)、102kPaで63.4±13.7(p<0.05)を示し、いずれの洗浄水圧でもバイオフィルムの厚さは有意(p<0.05)に減少した。この結果から、ジェット水流による洗浄はプラークコントロールの有効な手段であることが示唆された。
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