口腔内の歯の脱灰・再石灰化は、歯のエナメル質のリン酸カルシウム塩、すなわちハイドロキシアパタイトが、脱灰によってその構造をくずし、再石灰化によりくずれた構造を再構築していくものと考えられる。しかし、脱灰、再石灰化はどちらも相対的グレイ値を用いたミネラル濃度は同一であっても、その結晶学的構造は果たして同一であるのかは現在明らかにされていない。 本年度は、昨年度までの試料で用いた人工エナメル質をヒトエナメル質に替えて、さらに臨床に近い状態を再現するよう考慮した。ヒト抜去歯からエナメル質を削りだし、50~100μmに粉砕し分粒した。厚さ300μmのナイロンリングにエナメル質顆粒10mgをセルロースエステルメンブレンで封入し試料を作成した。試料は脱灰液で7日間脱灰した。その後、50mlの再石灰化液にそれぞれ1(n=10)、2(n=10)、3(n=10)、4(n=10)週間浸漬した。試料をCMRで撮影後、画像解析ソフトをもちいて平均ミネラル濃度を計測した。またそれぞれの試料についてFTIRを用いて赤外吸収スペクトルより結晶層の定性分析を行った。 その結果、再石灰化率は試料の浸漬時間と共に増加したが浸漬時間が4週間と1週間との間にp<0.05で有意差が認められた。したがって、ミネラル濃度解析には4週間以上再石灰化時間を確保する必要があると思われた。また、FTIRの結果、再石灰化を行って1週間でOCPを検出し、その後OCPは減少してアパタイトとして成熟していくことが明らかになった。
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