研究概要 |
口腔内の歯の脱灰・再石灰化は、歯のエナメル質が、脱灰によってその構造をくずし、再石灰化によりくずれた構造を再構築していくものと考えられている。しかし、脱灰、再石灰化はどちらも相対的グレイ値を用いたミネラル濃度は同一であっても、その結晶学的構造は現在明らかにされていない。昨年度までに人工エナメル質としてのカーボネートアパタイトをヒトエナメル質に替えて、さらに臨床に近い状態を再現した場合でも、ミネラル濃度とエナメル質の結晶構造は関連していることが示唆されている。 本年度は実験Aとして計画していた再石灰化溶液a(3.0mM CaCl_2,1.8mM KH_2PO_4,20.0mM HEPES)を用いて1週間、2週間、3週間、4週間を再石灰化期間として、ナイロンリングにヒトエナメル質粉末を封入しそれぞれの条件についてCMR,FTIRにより相対的グレイ値として再:石灰化率、結晶相について比較検討した。さらに実験Bとして再石灰化の溶液の違いと再石灰化率、結晶の違いについて同様の評価方法を用いて検討した。当初の予定を変更し、これまでに一般的に広く使用されている再石灰化液b(Ca(NO_3)_23.0mM,KH_2PO_4 1.8mM,KCI130mM,Tris/HCI 60mM)を用い、2週間、4週間再石灰化させた。その結果、実験Aにより再石灰化率は4週間後に有意差が認められた。また、結晶相は再石灰化の初期に本来のエナメル質と異なる結晶が析出され、再石灰化時間とともに増加していた。また、再石灰化溶液の違いは浸漬後2週間では有意差は認められなかったものの、4週間で再石灰化率は再石灰化液aと比較して有意に再石灰化液bが高かった。また再石灰化液bは浸漬後2週間と比較して4週間は再石灰化率に有意に高かったが、再石灰化液aは浸漬時間による有意差は認められなかった。本研究結果より、再石灰化の挙動はその条件によって異なるkとが明らかになった。したがって、再石灰化を評価するときミネラル濃度だけでなく歯質の結晶構造やその成分も考慮する必要があると思われる。
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