研究概要 |
平成20年度は,外科系病棟の看護業務スケジューリングの基準と条件の洗練,並びに典型的業務例の抽出を目的とし,過去のインタビューデータの再分析とタイムスタディデータの詳細分析を行った。 インタビューデータの分析の結果,業務スケジューリングに影響を及ぼす要因として,患者の重症度や年齢などによる業務所要時間や患者の状態予測に基づく看護師自身の所要時間の見積もりなど患者や看護師の要因,患者の急変を含む突発的出来事の発生や勤務メンバーなど状況的な要因が考えられた。 12名の看護師を対象とした,延べ14,451作業にわたるタイムスタディデータの分析では,患者の重症度を観察頻度3段階と活動の自由度4段階に分け,また看護師の臨床経験年数を4年未満,4年以上10年未満,10年以上の3段階に分類し,患者の重症度と看護師の経験年数による多様な看護業務の作業時間の相違を検討した。その結果,患者の観察頻度に基づく重症度では,安楽の援助,情報収集,与薬管理で,活動性に基づく重症度では,説明・指導,排泄の援助でそれぞれ重症度により作業時間の平均値に差が認められた。また,看護師の臨床経験別では,安楽の援助,移動の援助,説明・指導,与薬管理で臨床経験による作業時間の差が認められた。以上から,患者の状態および看護師の臨床経験により所要時間に影響がある業務は限定されており,スケジューリングのモデル化に際してはこれら患者状態と看護師の経験に影響される業務には,その影響を組み入れてモデル化する必要がある。
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