個人情報保護法の施行後、医療機関の多くは患者情報の利活用に関する制約に対し様々な取り組みをしている一方で、患者の意向に配慮した電子カルテの見え方にまで十分に検討されてはいない現状がある。本研究は、患者自身が自分の個人情報を、どの医療者に、どこまで知っておいてもらいたいかをコントロールできるシステムの枠組みを構築することを目的としている。 本年度は、看護師がケア実践していく中で、業務の支障にならない医療者間の情報共有の範囲および表示方法について明らかにすることを目的として調査を実施した。調査に先立ち、全国規模の学会に参加し、研究に資する情報収集、特に電子カルテシステムを開発している企業から患者情報の表示の仕方に関する情報提供を得た。それらの結果を基に紙面上の電子カルテの画面サンプルおよび無記名式質問紙を作成した。東海北陸地区にある515病院(ただし、電子カルテもしくはオーダーリングシステム導入済みが選択条件)に調査協力を依頼し、協力の得られた21病院の736名の看護師を調査対象とした。調査のすべては所属機関の生命倫理委員会の承認を得てから実施した。432名(回収率58.7%)の看護師から回答を得た。看護師の平均年齢36.3(SD9.9)歳、経験年数13.6(SD9.5)年、電子システムの利用月数32.9(SD23.9)か月であった。「患者の意向に沿って患者情報を非表示にするという考え」を受け入れ可能な者は約3割、賛成できる者は約4割であった。賛成できる者のうち、項目ごとの非表示方法を希望した者は約7割あり、私生活関連情報項目の非表示ならば受け入れ可能と回答した者は約半数であった。 今後は調査結果の分析をさらに進め、その結果から模擬患者情報を設定した電子カルテの画面サンプルを作成し、医療者を対象に面接調査を行なう予定である。
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