研究概要 |
本研究は、患者自身が自分の個人情報を、どの医療者に、どこまで知っておいてもらいたいかをコントロールできる電子カルテ画面の表示方法に関する設定システムを構築することを目的としている。 H22年度は、電子カルテの画面サンプル(PPT版)を使用し、前年度に調査協力の承諾を得ていた電子カルテシステム導入済みの病院に勤務する看護師と、新たに他職種(医師)を対象にグループインタビュー調査を実施した。他職種への調査にあたっては、専門家の協力を得て画面サンプルを一部修正した後に実施した。 看護師対象の結果は、男性6名、女性43名、平均年齢39.4歳、電子カルテ平均使用年数は4.8年で所属病棟は様々であった。画面サンプルを実際に見て、患者の意向に沿って情報項目を一部非表示にする考えに賛成し、かつこのような設定が必要であると回答したのは全体の4割であった。内容分析の結果から、情報プライバシーに配慮した電子カルテ表示の実用化に向けて、【情報コントロールの必要性】、【非表示方法による利益と不利益】、【患者情報の非表示と表示の手段】、【実用化に向けて検討すべき課題】の4つのカテゴリーが抽出された。 医師対象の結果は、男性2名、女性3名、平均年齢40,8歳、電子カルテ平均使用年数は5,2年で所属診療科は様々であった。一部の項目にモザイクをかけて非表示にした部分の解除方法について、隠されている項目を一つずつクリックして表示する方法と、緊急時など医療上の判断でその情報が必要とされる場合に、特定のボタンへのクリックで全体を表示する方法の両方を希望し、特に緊急時は敏速に情報が表示できる仕組みを要望していた。 今回の調査を通じて、自己情報コントロール権に配慮した設定システムの臨床現場での有用性を確認でき、緊急時やチーム医療における情報共有のあり方など、今後の課題を具体的に明らかにすることができたと考える。
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