本研究では、「足趾ケア」が、高齢者の起立動作や歩行、特に転倒予防における姿勢制御機能の面で、どのように働きかけているのか検討することである。平成22年度は、(1)健康高齢者を対象とした'足趾ケア'介入終了後の追跡評価を行うとともに、前年度から継続事項である(2)施設内入所高齢者を対象とした'足趾ケア'による変化の検討を計画として挙げた。 1. 健康高齢者を対象としたケア終了に伴う変化の検討:60歳以降の健康高齢者男女9名を対象に、足趾ケア介入終了後6ヶ月後、ならびに1年後の足の自覚症状とセルフケア実施状況について調査した。結果、セルフケアの実施状況はケア介入以前と同じ状態となっていた。足の自覚症状については、6ヶ月の時点ではケア終了時と変わらず歩行時の違和感は消失したままであったが、1年後の時点では違和感が出現していた。 2. 施設内入居高齢者を対象とした検討:施設内入所健康高齢者80名に対して足趾ケアの提供を行ったうち、3ヶ月を超えて追跡評価ができた者は14名であった。被験者の自覚症状や外観からの皮膚・爪の状態においては改善傾向がみられたが、立ち上がり動作や立位・歩行動作での変化は確認されなかった。さらに、6ヶ月時点で爪白癬状態の評価SCIO (Scoring Clinical Index for Onychomycosis)にて改善が認められた者が2名(16.7%)、12ヶ月時点では4名(50%)が改善していた。しかし反対に、姿勢・動作評価では12ヶ月時点において1名で機能低下が認められ、それ以外の者では変化は認められなかった。このことより、足趾ケアは、爪白癬といった皮膚病変の改善には有効な介入であることが示唆されたが、姿勢制御への効果という点では明確には示すことができなかった。
|