本研究の目的は、学士課程で習得する看護技術の中から、成人看護学領域で教育・評価すべき看護技術を抽出・選定し、それらの到達度を明確にしたOSCEによる成人看護技術実践能力評価プログラムを開発することである。今年度は、文部科学省の「学士課程で育成する看護実践能力の19項目と卒業時の到達度」と厚生労働省の「看護師教育の技術項目と卒業時到達度(案)」を参考に、本学の2年次生を対象に成人看護領域で教育・評価すべきと考えられる看護技術項目の中から健康障害を持つ患者の観察、問診、聴診、アセスメント、ケア、患者への説明と態度を看護技術評価項目に選定し、OSCEの複合課題を2課題設定した。課題1は「呼吸機能障害のある患者の観察・ケアと酸素吸入」で評価項目は14項目、課題2は「栄養・代謝機能障害のある患者の健康歴聴取と看護アセスメント」で評価項目は12項目とし、0-1-2の3段階で採点した。OSCE受験学生数は参加同意の得られた58名であった。各課題の総合得点の平均値は課題1が15.7(満点28点)課題2が19.5(満点24点)であった。課題1は呼吸状態の観察や医師の指示確認等の評価項目の得点が低かった。課題2は問診の目的説明や収集した情報のアセスメントが低かった。2年次の教育課程において知識を獲得し、かつ体験した看護技術項目を選定してOSCEを実施したが、確実な知識に基づいた実践とは言い難く、OSCE実施前・後に学生が主体的に知識や技術を自己評価できる方略の必要性が示唆された。次年度は今年度OSCEの実施評価を踏まえて課題の再検討をするとともに、3年次のOSCEプログラムの作成・実施評価により、成人看護技術実践能力評価を行う。
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