研究概要 |
本研究は、看護技術として実施頻度が高く損傷を伴う『抗がん剤の静脈投与』と実施方法について近年問題となっている『グリセリン浣腸』に伴う有害事象を回避するための実証的研究に基づく指針作成を目指すものである。それぞれの研究目標は下記のとおりである。 (1)抗がん剤の静脈注射 抗がん剤の静脈内投与に伴う血管炎や硬結などについてはそのメカニズムが十分解明されていないのが現状である。そこで、実際に臨床における有害事象の内容を明らかにするためにがん看護認定師(岩手医科大学等の研究協力者)の協力を得て詳細に調査する。その内容を受けて、実験的にヒトの病態を再現できる病態動物モデルを確立する。この病態動物モデルを活用し、有害事象の発生機序を検索するとともにそれを回避するための看護技術や投与方法などを明らかにし、有害事象を回避するための知見を得る。さらに、血管外に漏れた場合の有効な対処方法についての研究も実施し、根拠に基づくケア方法について確立する。 (2)グリセリン浣腸(GE) GEによる有害事象の一つと考えられていた血圧低下については、裏付ける臨床事例はなかったが、研究代表者らのCCUでの調査研究でGEにより血圧低下を引き起こすことが明らかとなった(松田・武田,第6回技術学会:2007)。しかし、その頻度は数%であり、メカニズムについては明らかになっていない。そこで、GEによる血圧低下の病態動物モデルを構築し、その要因を明らかにするとともに、血圧低下を回避するための看護技術を確立する。また、ディスポタイプの50%グリセリンの浸透圧は約20(対生食)であり、直腸粘膜に対する化学的な刺激性を有することが明らかとなった(加賀谷・武田,第6回技術学会:2007)。そこで本研究では、投与量や温度、速度などを検討するとともに、体位に応じたGE実施方法に関する解剖学的な側面から安全性を検討する。これらの知見を総合的に検討し、GEによる有害事象を回避するための指針を作成する。
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