1)平成20年度は一般総合病院の看護部門の責任者6名(内2名は副院長職兼務)を対象に、彼らがどのような課題に直面し、将来においてどのような役割が求められ、その役割の遂行のためには、どのような知識・技術が必要であると考えているのかを明らかにするために半構成的な面接を行った。その結果、彼らはいずれも高齢少子社会の中で、保健医療改革や診療報酬体制、介護保険制度の急速な変化、医療機関の機能分化の推進、複雑化する医療提供場面における安全対策の強化の必要性、患者の権利意識の浸透と個人情報保護や情報開示などへの関心の高まりによる説明責任、などの変化の中で、看護管理者には今までにない高度な看護の機能と役割が求められてきている事を認識していた。 また、どんな状況であれ看護管理者は、医療チームが効果的・効率的にサービスが提供できるように患者の立場で発言し協働する、看護者に看護のやりがいを感じさせる、組織全体を見渡して効果的ケア提供のためのシステムを創る、対象者のニーズを見極め、新たなサービスを創っていく、理想とする医療現場を創り出していく意欲と実行力が必要であると考えていた。 2)また全国の200床以上の一般病院で日本病院機能評価の認定を受けている病院並びに全国の特定機能病院1022病院の病院管理者に対して、看護部門責任者の管理能力をどの様に評価し、またどの程の経営管理能力を期待し、今後どの様な役割を期待しているのかの調査を行った。その結果、経営分析・市場分析・財務分析などの能力に課題があり、院長を補佐して病院経営に参画し、チーム医療体制の運営、人材育成への期待が高いことが明らかになった。 3)看護管理者のコンピテンシーや実践規準、看護管理者教育プログラムなどについての国内外の文献と上記1)2)の結果により、看護部門のトップマネジャーに求められる役割、管理能力、知識・技術、業績指標について情報収集を行った。今後はそれらより、看護のトップマネジャーのコンピテンシーのクラスターとディクショナリー(評価項目)を導き出す予定である。
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