本年度上期は、加齢と疾患が、睡眠や心拍変動の周波数解析から得られるパワースペクトル値にもたらす影響についての知見を、文献検討により整理した。 下期には、携帯型心拍加速度計により高齢者から得られた心拍データを、MemCalc/Win(GMS社)を用いて周波数解析を行い、若年成人のデータから作成した睡眠深度推定アルゴリズムに沿って睡眠を評価し、睡眠経過図を作成した。若年成人と壮年の場合は、睡眠中のパワースペクトル指標の分布に特徴的な違いが認められたが、各被験者の一晩の値を睡眠深度判定の基準値として用いることで、若年成人と壮年には同じ法則で睡眠深度を推定することが可能であった。しかしながら、高齢者や日常生活動作レベルの低下した被験者などのように、浅睡眠の割合が非常に高く、また睡眠周期が不鮮明で睡眠構造が若年健康成人とは大きく異なる場合には、同じ基準で睡眠深度を推定することは困難であった。このような被験者のデータに対して、若年・壮年者と同じアルゴリズムを用いると、深睡眠を多く判定してしまう傾向が見られたことから、高齢者や睡眠構造が大きく異なる被験者では、別の基準を作成する必要性が明らかとなった。特に、高齢者の場合、同じ年齢層であっても日常生活動作の自立程度によって、評価基準を変える必要があると考えられた。 次年度は高齢者のデータ数を増やし、それらの被験者データで推定する方法を検討する予定である。また、今回用いた手法とは別の方法で心拍データを周波数解析し、異なった解析手法から得られたパワースペクトル値であっても、同様なアルゴリズムで推定が可能か否かも検討する。
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