研究概要 |
本研究では、専門職である看護師を目指す学生の、成長発達過程における人間形成要因(親子間の心理的距離)が現在の自己教育力にどう影響しているかを、看護学部と他学部で比較検証した。 無作為に抽出し調査協力の得られた全国55大学58学部15,405人の学生を対象にアンケート調査を実施した。調査項目は、親子間の心理的距離を測る項目を独立変数とし平均点を算出、父母から肯定的なかかわりを受けた者(心理的距離が近い):肯定的評価群と否定的なかかわりを受けた者(心理的距離が遠い):否定的評価群の2群に分類した。また、4側面を持つ自己教育力測定尺度(A.成長・発展への志向、B.自己の対象化と統制、C.学習の技能と基盤、D.自信・プライド・安定性)を従属変数とし平均点を算出、看護学部生(以下看護)と他学部生(以下他学)それぞれをt検定により分析した。 51大学55学部、6974人から有効回答があり、回収率は45,3%であった。心理的距離得点の平均値(看護/他学)は父親が2.14±0.99/2.07±0.97、母親が2.60±0.87/2.47±0.90で、父母ともに看護においてp<0.001~0.05で有意差を示した。看護では、父親からの肯定的評価群が、自己教育力の4側面すべて(A.3.03±0.39、B.2.76±0.33、C.2.57±0.41、D.2.52±0.41)において、母親からの肯定的評価群は、2側面(A.3.03±0.39、D.2.51±0.41)において、ともにp<0.001~0.05で有意差を示した。しかし、他学では父母ともに2群間に有意な差は認めなかった。 専門職を目指す看護は他学よりも、青年期の成長発達過程において両親が与える評価、特に肯定的な評価を受けていると認識している者が多く、親との心理的距離が近いと推測され、それが自己教育力の向上に影響しているという特徴が示唆された。
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