平成20年度は、以下の4点を実施した。 1.過去数年間に医療事故を引き起こしその後病院の健康管理室に来室した看護師の訴えと症状を基に、医療事故と関連する症状を明確化した。その結果、こうした看護師の中には、医療事故が離人性障害と関連していると考えられる事例が含まれていることが明らかになった。 2.医療事故と関連する精神症状を明確化するため、大規模なサンプルを対象とし医療事故の経験の有無と各種の精神症状との関連を検討するための質問紙調査を実施した。調査は都心の大学付属病院と大都市近郊の大学付属第2病院の2院を対象とし、すでに1病院は回収を終え現在分析中であり、もう1病院も3月末に回収を完了する予定である。 3.実際に医療事故を引き起こした者の精神状態を明確化するため、インシデントレポート報告者に対して精神状態を評価する質問紙を実施中である。 4.上記3の対象者に面接調査を実施し、事故の状況、精神状態との関連性、考えうる対処法等にっいてインタビューを実施中である。現在、インタビューを終えた者からは、事故当時、解離、離人、抑うつなどの症状が存在したとの報告があり、これらの症状は平均1ヶ月の休職と復職後の保護的環境の中で軽減傾向にあり、それに伴いミスが減っているとの表現が得られている。しかし、現時点では対象者の人数も少なく、詳細な分析には至っていないため、これらの訴えが一般化可能なものであるかについては現在のところ断定は出来ない。 引き続き、サンプル数を増やし詳細な分析を行っていく予定である。
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