研究概要 |
本研究の目的は、アメリカ、メリーランド大学のThe Gordon W.Prange Collection(以下、プランゲ文庫)の現地調査により、パンフレットおよび新聞の内容と、これらに対する検閲結果を分析し、1.占領下における看護の社会的活動の実態と、これらに対するGHQの方針を明らかにするとともに、2.当時の看護の社会的活動とGHQによる規制が占領終了後の日本における看護に与えた影響を検討することである。 平成21年度における現地調査は、新聞記事に焦点をあてて実施した。現地調査に先んじ、「占領期メディアデータベース化プロジェクト委員会(代表:山本武利)」のデータベース(以下立占領期データベース)を用いて、看護に関する新聞記事リストを作成した。現地調査では、看護に関する新聞記事リストと実際の新聞との照合(紙面の段組み、紙面全体に占める記事の割合、記事の見出しと内容、記事の発信者、検閲の有無)を行った。 平成21年度における研究では、プランゲ文庫に所蔵されている新聞の中から分析対象記事を設定した。分析対象記事は、1949年7月11日のGHQ看護課長Grace Elizabeth Alt(以下、オルト)が記者会見した記事(以下、対象記事)とし、地域は占領期データベースで地方新聞の検索が可能である九州、四国、中国立北陸地方とした。その結果、以下のことが明らかになった。1.1949年7月8日に行われたオルトの記者会見は共同通信社を通して配信され、掲載には地域差がみられた。2,対象記事は、日本の看護婦たちに、オルトが占領途中でGHQ看護課長を退任したと誤解させた可能性がある。
|