平成21年度は拍動血流ポンプを用いた血流計測システムの製作と高齢者と20代学生のコロトコフ音波形の比較を主に行った。 まず、血流計測システム用の上腕部モデルとして骨に見立てたプラスチック棒を軸としてシリコン製のものを作成した。血管に見立てた太さの異なるタイゴンチューブを3種類ほど表層近くに埋めることにより、マイクロホンによる計測を可能とした。流体としては純水製造機で作成された蒸留水を用いることにより、コロトコフ音に近い波形が取得できることが判明した。しかしながら、完全な空気抜きが実施できなかったために、実際の人体の波形に比べると雑音が多く、改善が必要なことも判明した。 また、デイケアセンターに通所している高齢者に協力を依頼し、高齢者のコロトコフ音波形の収録を行い、20代の学生との波形との違いについて検討を行った。高齢者は複数の方の波形を2ヶ月ほど定期的に取得した。その結果として、いくつか顕著な違いが明らかになった。高齢者の場合、まず取得波形の振幅自体が20代の学生に比べると小さいほか、波形自体の変化も明らかに少なくなる傾向にあることが明らかになった。これは血管自体の弾力性が失われていくためであると思われる。また、マイナスピーク周波数も明確に現れない傾向にあることが明らかになった。さらに、加速度脈波波形も形が大きく崩れてしまうことが多く、加齢度指数による推定年齢の計算が当てはまらない傾向にあることが判明した。
|