本研究は、ケアの質を保証する効果的な人的資源管理のための看護実践環境の評価を可能にするシステムの構築を目指し、日本の看護師が仕事を継続し、専門職として成長しつつ質の高い患者ケアを提供することを支える看護実践環境を評価するツールを開発することを目的としている。平成20年度は、文献検討による看護実践環境および周辺概念の整理および概念分析を行い、看護実践環境の特徴についてのフォーカスグループインタビューを通して、看護師が仕事を継続し専門職として成長しつつ質の高い患者ケアを提供することを支える看護実践環境に不可欠な要素の抽出を行った。また、これらを元に、看護実践環境を測定する質問紙のための質問項目の検討を行なった。これらの検討の結果、看護実践環境は、看護師の実践を取り巻く物理的、対人的および社会文化的環境の総体であると定義づけることができた。また、物理的、対人的および社会文化的環境は、看護師の人員配置、職場の安全性や快適さ、上司との関係、同僚との関係、看護師の自律性、看護ケアの価値に対する組織の認知、継続教育/教育的支援、組織理念・方針など、各々3〜5の要素から構成されることが見出された。さらに、看護師と看護実践環境と相互作用の結果として、看護師には仕事満足、仕事継続意志、仕事への貢献意欲、キャリア発展意志といったアウトカムが生じ、個々の看護師に生じる看護師アウトカムは、ケアの質や看護師の離職率といった組織全体のアウトカムに影響を与えることが仮定された。以上より、看護実践環境の構成要素と看護師の仕事継続および患者ケアの質との関係についての仮説が設定でき、次の段階として、この仮説の検証を通して看護実践環境評価ツールの作成へつなげることができると考えられた。
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