本研究は、ケアの質を保証する効果的な人的資源管理のための看護実践環境の評価を可能にするシステムの構築を目指し、日本の看護師が仕事を継続し、専門職として成長しつつ質の高い患者ケアを提供することを支える看護実践環境を評価するツールを開発することを目的としている。平成22年度は、過去2年間の成果を踏まえ、看護師の看護実践環境に対する認知を問うことによって、看護実践環境を評価するツール試案を作成した。ツール試案では、看護師の実践環境を【対人的環境】【社会文化的環境】【物理的環境】の3カテゴリーから構成されるものとし、さらに各カテゴリーの下位カテゴリーとして、<対人関係><看護管理><承認><組織構造><看護実践><キャリア支援><人事方針の公平性><地域社会との関わり><仕事・職場の安全性と快適性><人員配置と仕事量><給与・福利厚生・WLB>の11カテゴリーを設定した。そして、各下位カテゴリーに対して2~5の評価質問項目を設定し、各項目につき1~3の質問文を作成し、計60問の質問文からなるツール試案が完成した。完成したツール試案については、看護管理者および現に医療機関で勤務する看護職者によるフォーカスグループ4グループにより、再度内容の妥当性を確認した。また、看護管理者向けの情報交換会を開催し、本ツール試案の活用について提案した。今後は、このツール試案を用いて実際に看護実践環境を評価し、ベンチマークをしていく。そして、看護管理者が活用することにより、自らの管理する部署の看護実践環境を継続的に評価し、人的資源管理に利用できるデータベースの構築を次の段階として行っていく。
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