研究課題
本研究は、在宅認知症患者を介護している家族が、介護という行為を人権思想を中心に、どのように認識・実践しているかを明らかにすることである。家族介護者の実態や患者の状況を把握すると共に、家族の尊厳性認知・行動尺度を開発する。家族の人権意識が介護状況の如何なる要因と関係するかを検討する。これらにより、認知症患者の尊厳性を保つための家族支援のよりよい方法論を得る。平成22年度は下記の研究活動を実施した。1.認知症患者、及び介護家族者に実施した調査の分析(対象者94名)家族介護者65歳未満53名(A群)、65歳以上41名(B群)の2群間におけるストレス、介護負担、自己効力、生活満足、自尊感情、患者の行動能力の平均値の差を検討したところ、自尊感情はA群よりB群の平均値が有意に高かった(P<.05)。また患者の行動能力では、A群よりB群の平均値が有意に高い傾向がみられ、65歳未満の介護者は、認知症患者の行動能力が低い対象を介護していた。2.家族介護者の尊厳性認知・行動に関する尺度の分析、信頼性・妥当性尊厳性認知・行動に関する質問の因子分析において、4因子24項目が抽出された。第1因子「対等性の尊重(α=.84)」、第2因子「自立の尊重(α=.68)」、第3因子「個人の尊重(α=.72)」、第4因子「誠実性の尊重(α=.60)」と概念化した。4つの因子の信頼性係数はα=.60~.84であり、内的一貫性が確認された。3.尊厳性認知・行動下位尺度と諸要因との関係性尊厳性認知・行動の4つの下位尺度とストレス、介護負担、自己効力、生活満足、自尊感情との関係は、「対等性の尊重」と自尊感情において正の相関(r=.25)が認められ、また「誠実性の尊重」と介護負担、生活満足において、それぞれ負、及び正の相関(r=-.43、r=.28)が認められた。
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宇部フロンティア大学看護学ジャーナル
巻: 4(1) ページ: 15-22