研究概要 |
今年度は,看護学生および卒後1〜2年目の看護師・助産師を対象として,複数判断基準活用のための演習・研修を次のように実施した。 1.看護学生に対する演習 平成17年度〜19年度の研究(基盤研究C課題番号17592228)に開発された,複数判断基準活用のためのテキストを用いた内容の演習を,パイロットスタディとして卒業前の時点で実施した。学生にとっては,初めて複数の看護問題に対する課題に取り組んだため,難しいと感じていたようだった。しかし,終了後の学生のレポートにより,「今まで一人の患者さんの計画しか立てたことがなく,複数の患者を受け持ったときには優先度を考える必要があることがわかった」や,「就職後の様子がわかり,この時期に練習することができ,心の準備ができた」という反応が見られた。このことより,学生にとっては卒業までに複数課題のマネージメントについて学習させ,訓練させる意義が明らかになった。教材に関しては,学生にとってよりイメージしやすい内容にしていくこと,演習中には具体例を挙げて説明を加えるなど,卒後教育以上に細やかに関わっていく必要性が示唆された。 2.卒後1〜2年目の看護師・助産師に対する研修 上記のテキストを用いて,看護の優先度決定に関する思考トレーニングを行なった。 1)実施日:卒後1年目研修平成20年5月13日,10月15日,平成21年2月18日対象68名 卒後2年目研修平成20年6月18日,平成21年2月17日対象59名 2)研修課題卒後1年目研修1:注射針課題,研修2:ナースコール課題,研修3:病棟シミュレーション課題 卒後2年目研修1:予測型看護シミュレーション課題,研修2:スケジューリングシミュレーション課題 3)結果 ワークシートの記述内容および感想によると,自己の判断基準に気づき,さらに他者の基準を知ることにより,判断基準が拡大したという記述がみられ,研修の目的は達成されたと推測される。卒後1年目の看護師・助産師には,個別に先輩の指導担当者が配置される。研修内容が職場で活用できるよう,指導担当者向けに卒後研修の説明会を行い,協力を求めた。また,研修中間時点での評価を指導担当者に伝えるとともに,卒後1年目の職場での課題も把握できるように計画した。ワークシートの課題に関しては,課題の型分けを行い,研修目的を踏まえ卒後1年目から2年目終了時までに段階的に難易度が上がるよう検討し,改善案を作成した。来年度実施し,さらなる改善を目指す。
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