昨年に引き続き、A病院の脳神経外科・整形外科病棟において、患者の身体状況を中心とした調査を実施すると共に、平成21年度より改訂した移乗介助の基準案を適用し、患者に合わせた、スライドシートを用いたベッド上での側臥位への体位変換や上方への移動、ベッドのギャッジアップ機能を用いた端座位への体位変換、ボードによる座位でのベッドと車いす間の移乗、リフトによるベッドと車いす間の移乗を、臨床の看護師とともに実施した。移乗方法の妥当性については、看護師にインタビューを行い、検討した。実施に際しては、事前に患者・家族に十分に説明し同意を得た。 患者調査は期間内(3日間)に、病棟において移乗介助援助が可能だった患者のうち、12名について横断的に実施した。患者の基礎疾患には脳血管疾患が多く、麻痺と同時に、姿勢を保つための筋力低下・痙性・理解力低下・円背・などの心身の状況とともに、点滴・バルンカテーテル挿入などの医療用具の装着、エアマットの使用によるベッドの座面の高さの問題や調度品設置による、床の動作スペースの減少など、移乗用具を用いて移乗する際に注意を要する状況が多いことが確認された。 スライドシートを用いた体位変換については、下肢の関節可動域を含む筋力の程度により、援助方法が異なることが確認され、ボードを用いたベッドから車いす間の移乗については、完全に自力で座位を保てなくても、看護師の支え方や患者を進行方向へ引く力を加えることで実施可能な事が確認された。また、全介助のため、今まではベッド上のギャッジアップしかできなかった患者にも、ハーフスリングとリフトを用いることで、安定して車いすに移乗することができ、患者の早期離床に有効であると考えられた。
|