研究概要 |
根本原因分析(RCA; root cause analysis)とは実際に起きた転倒について原因をプロセスに従って逐次追求し、最終的にシステムとプロセスに原因を求め、それを改善していくことである。本研究の目的は,転倒予測に使用したアセスメントツールの得点内容と転倒者の転倒後に根本原因分析(RCA)を行い,それらを分析・統合して,病院における転倒予防システムを構築し検証する3年間にわたるものである。 本年度は転倒の根本原因分析に関する欧米の研究のレビューおよび手法について学び,実際の転倒事例の分析を行うことを目的とした.方法は,(1)医療事故分析のセミナーに参加し,分析手法を演習する.(2)その方法に基づき過去の転倒事例(39名,転倒件数44件)の分析をした.その結果,『患者見守り時の責任の明確化』(ヒューマンファクター/コミュニケーション),『認知症者の行動の学習』(ヒューマンファクター/訓練),『マンパワー不足』(ヒューマンファクター/疲労・勤務体制),『座位時床センサー無効・離床コール導入』(環境/設備器具),『器具使用方法の指導』(規則/方針),『睡眠薬の影響・術前睡眠薬の全面中止』(防止策)などが抽出できた. これらを通して,RCA手法で得られた根本原因は患者側の能動的な意図や転倒に至る背景やシステム、教育の問題が浮かびあがり、教育やシステム変更などの対策が導き出された。すなわち,転倒の根本原因を探ることは新たな転倒防止策につながる可能性があることが示唆された。
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