研究概要 |
本研究は転倒予測に使用したアセスメントツールの得点内容と転倒者の転倒後に根本原因分析(RCA ; root cause analysis)を行い,それらを分析・統合して,病院における転倒予防システムを構築し検証することを目的に3年間にわたるものである。 本年度は一急性期病院(120床)で転倒し,報告された41転倒事例について、なるべく早く転倒者と転倒報告者に面接を行い、転倒状況を再構成して根本原因の手法に沿って分析を行った。その結果、1)41転倒事例の特徴として転倒者は27名(男性12名、女性15名)、平均年齢は80歳であった。転倒状況では転倒時間は夜勤帯が34件(82.9%)、転倒場所はベッドサイドが35件(85.4%),転倒時の行動として、排泄が23件(56.1%)とそれぞれ高率を示した。損傷では骨折が2件(4.9%)であった。2)アセスメントツール得点(日本看護協会編)は平均14.83点であり、危険度IIが21例、危険度IIIが20例であった。3)根本原因分析の結果、57項目が抽出され、カテゴリー化したところ《認知症に対する理解不足》,《疾患・症状・治療によるふらつきの増強》,《確認が不十分》,《高齢者に対する環境調整の不備》,《自信による単独歩行》,《抜ける・滑る・つまずく履物》,《コミュニケーション不足》,《夜勤帯のマンパワー不足》の8つが抽出された。 今回の結果を通して、後期高齢者が多く、そのため認知症との関係、疾患や症状、治療がふらつきを増強させること、患者が努力して歩行に自信を持つことも要因となること、患者・医療者共に確認が不十分であること、環境や履物などがあげられたので、これらを考慮したシステムの構築が示唆された。
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