研究概要 |
本研究は,転倒予測に使用したアセスメントツールの得点内容と転倒者の転倒後に根本原因分析(RCA)を行い,それらを分析・統合して,病院における転倒予防システムを構築し検証する3年間にわたるものである。本年度は最終年度であり、昨年度に収集した一急性期病院で発生した41例の転倒について,転倒の発生直後から追跡し,再構成し、RCAの手法を用いてその要因を解明し、システム構築の視点に立って再分析した。すなわち,1場面ごとに出来事流れ図から根本原因の候補を出し,根本原因を特定した.さらに,共通した意味内容をもつ要因を抽象化してサブカテゴリー,カテゴリーとした.これらをもとに因果関係図を作成し、システム構築の原案とした。その結果,44の根本原因が分析され,15のサブカテゴリーと6つのカテゴリー,すなわち【治療や病状の変化によるふらつきの増強】【ふらつく人や高齢者の生活動作に合わない環境】【認知症者の夜間の行動】【夜勤帯の転倒者の増加による観察の不足】【見守りについてのコミュニケーション不足】【患者や看護師が忘れやすい安全確認】が転倒要因として解明できた。さらに、アセスメントツールとの関連ではツール得点が7-27点の範囲であり、危険度はII(転倒を起こしやすい)が20場面(48.8%)、III(転倒をよく起こす)が21場面(51.2%)であり、すべて転倒をおこしやすいと予測した患者であった。 以上を通して,高齢入院患者が手術などの治療を通してふらつきが増していることや認知症(含む認知障害)者の夜間の行動が転倒の原因に強く関係していること,夜間のマンパワー不足が患者・看護師ともに安全確認や見守りなどコミユニケーション不足につながっていると考えられた。アセスメントツールも有用であり、抽出された要因を基盤にしたシステム構築を講じることで転倒が減少できると示唆された。
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