化学療法による味覚変化症状の軽減及び対処能力の向上に向けた看護プログラムの開発を目的に、味覚変化を自覚している化学療法患者148名を対象に味覚・口腔機能の変化に関する5段階尺度による質問紙を用いた実態調査を実施した。データを解析した結果、症状は「自発性異常味覚」、「味覚減退」が各3割、「風味障害」が2割を占めた。各症状には相関関係がみられ、特に「味覚減退」と「風味障害」にやや強い関連がみられた。このほか、「口腔乾燥」と「自発性異常味覚」、「悪心」および「嗅覚嫌悪」と「自発性異常味覚」に相関関係がみられた。これらの結果より、化学療法に伴う味覚変化を、亜鉛欠乏の際に共通してみられる「風味障害」や「爪変化」を伴う「味覚減退」を主体とした『亜鉛欠乏型味覚変化』、「口腔乾燥」と、苦味や金属味などの「自発性異常味覚」を主体とした『苦味・口腔乾燥型味覚変化』、「悪心」や「食欲低下」および「嗅覚嫌悪」に合併する『生体防御型味覚変化』からなる3分類に類型化することができた。なお、これらの類型症状は、単独で出現することもあれば、重複することもある。また、『亜鉛欠乏型味覚変化』が2-3週間以上持続するのに対し、後者2類型は、治療後1週間程度のみに限定して出現するという特徴を持つ。 今後は、『亜鉛欠乏型味覚変化』に対する亜鉛補充、『苦味・口腔乾燥型味覚変化』に対する酸味調味料の使用と、酸味ガム・キャンディーの使用、『生体防御型味覚変化』に対する食事指導と心理的支援など、各類型症状に合わせた対処法の検討とその評価、対処能力・サポート体制向上に向けた支援策の検討を行う予定である
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