平成22年度は、味覚変化を自覚している化学療法患者254名を対象に行った味覚・口腔機能の変化に関する質問紙査を分析し、塩・酸・甘・苦・うま味の【基本味の低下】、肉類や油ものへの嫌悪を示す【不快症状】、【自発性異常味覚・錯味】、風味障害や悪味など【全般的味覚変化】の4概念に沿っておもな化学療法レジメンごとの症状プロフィールを分析した。 悪性リンパ腫治療に用いられるR-CHOP療法では【全般的味覚変化】が大きい一方【不快症状】は小さく、乳がん治療ではFEC療法の際には【不快症状】が強く、ドセタキセルによる治療では【不快症状】は小さく【全般的味覚変化】が大きいという結果が得られた。 また、味覚変化を自覚している化学療法患者8名を対象に行った詳細な面接調査から、【酸味の利用】【甘い食品の摂取】【イモ類の摂取】【匂いの回避】【苦味の回避】【食品とタイミングの重視】などの対処方法が明らかとなった。症状と対処法の関係を見ると、【酸味の利用】【イモ類の摂取】はすべての症状に対して用いられ、【匂いの回避】【苦味の回避】は【不快症状】に、【食品とタイミングの重視】はおもに【自発性異常味覚・錯味】に用いられていた。 最終年度は、以上のような症状プロフィールに合わせた対処法について、タブレットPCを利用したマルチメディア教材を作成し、味覚変化症状の改善や対処能力・サポート体制向上に向けた介入効果の評価を行う予定である。
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