近年の分子遺伝学の発展により、遺伝性腫瘍の患者や家族をとりまく医療が急速に変化してきている。大学院教育において少しずつ取り入れられるようになってきたが、わが国では看護基礎教育において遺伝学や遺伝性腫瘍、遺伝看護などに関して統合されたカリキュラムが提供されている教育機関は数少なく、現任教育も不十分である。そのため、がん医療に携わる看護師が遺伝性腫瘍やそのような家系の患者や家族へのケアに精通しているとは言い難い。そこで、遺伝性腫瘍の可能性のある家系の方々が適切な医療を受けるためには、看護師の遺伝に関する知識の向上が必要である。本研究は、遺伝性腫瘍の医療の均てん化を目指すために、看護師に対する遺伝性腫瘍の知識の普及のためのがん遺伝看護教育プログラムを開発することを目的としている。本年度は、プログラム案を作成するために、ミニ勉強会を開催し、遺伝性腫瘍に関する知識と教育内容の検討を行った。 遺伝相談外来の開設直後の2つの施設において、看護師を対象に遺伝性腫瘍に関してミニ勉強会を開催した。参加者は、両施設とも15名前後と関心をもっている看護師は多かった。勉強会の内容は、昨年度の結果をもとに遺伝性大腸がんや遺伝性乳がんに関するものを中心に、現在明らかになっている遺伝性腫瘍に関する情報、家系図の取り方、遺伝子変異の意味、治療方法に関する考え方、患者や家族のサポート方法などを含めた。その結果、今までの臨床経験を思い返すと出会っていたと思うが、当時は知識がなく遺伝性腫瘍としての対応はできていなかったと述べる看護師が幾人もいた。また、用語や内容は難しいが、今後は必要となる知識であるため更に勉強したいと希望するものも多かった。今後は、得られた意見をもとに勉強会の内容を適宜修正し、勉強会の回数を重ね洗練させていき、看護教育プログラム試案を作成し実施・評価する予定である。
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