近年の分子遺伝学の発展により、遺伝性腫瘍の患者や家族をとりまく医療が急速に変化してきている。大学院教育において少しずつ取り入れられるようになってきたが、わが国では看護基礎教育において遺伝学や遺伝性腫瘍、遺伝看護などに関して統合されたカリキュラムが提供されている教育機関は数少なく、現任教育も不十分である。そのため、がん医療に携わる看護師が遺伝性腫瘍やそのような家系の患者や家族へのケアに精通しているとは言い難い。そこで、遺伝性腫瘍の可能性のある家系の方々が適切な医療を受けるためには、看護師の遺伝に関する知識の向上が必要である。本研究は、遺伝性腫瘍の医療の均てん化を目指すために、看護師に対する遺伝性腫瘍の知識の普及のためのがん遺伝看護教育プログラムを開発することを目的としている。本年度は、昨年度作成したプログラム案の内容を洗練させるため検討を重ねた。 遺伝相談外来の開設直後の施設の看護スタッフに対して、勉強会を開催し、知識の普及および教育プログラム案の内容についてディスカッションを行った。新しい知識であり、遺伝や遺伝子のことは難しいという先入観があるため戸惑いも見られたが、これからの医療においては必要な知識であることを認識し、今後も勉強を行っていくと述べていた。また、看護系大学院のがん看護学特論を担当した際に、プログラム案の内容を含めて講義を行った。その結果、がん看護CNSを目指す院生も、今後は必要になる知識と認識していた。今後は、得られた意見をもとに教育プログラム案をさらに評価・修正し、現任教育や大学院教育、そして看護基礎教育の教育プログラムとして活用してもらえるような提案を行っていく予定である。
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