本研究では虚血性心疾患患者で通院治療中の男性が冠危険因子の関わる生活や心身の状態をセルフモニタリングすることの効果とセルフモニタリングへの影響因子の関係を明らかにすることを目的としている。最終年度である本年度は、収集したデータを分析し、支援指針を検討した。 91名の研究参加者のうち、脱落者等を除外し、6ヶ月間のセルフモニタリング実践群(以下実践群)41名、対照群36名を分析対象とした。 その結果、両群とも6ヶ月間のストレス状態は「普通」レベルであり、実践前後で有意な差はなかった。身体状態に関しては実践群で血中のHDLコレステロールの値は維持できていたが、対照群では有意な低下が見られた。栄養摂取に関しては実践群では脂肪エネルギー比率、飽和脂肪酸エネルギー比率は有意な変化がなかったが、対照群では有意に増加した。塩分摂取量は、実践前から管理目標値を大きく上回っており、両群ともに有意な変化はなかった。身体活動に関しても両群とも、有意な変化はなかった。実践群は身体状況、栄養摂取、身体活動のいずれかが冠危険因子管理目標値内に改善した者の割合は80.5%であり、対照群44.4%に比べ、有意に高かった。 セルフモニタリングの導入はHDLコレステロール、脂肪エネルギー比率、飽和脂肪酸エネルギー比率の管理目標値内への維持、改善に有効であったが、ストレス管理、食塩摂取、身体活動の改善への明らかな有効性は確認できなかった。 また、実践群のうち、手帳記述量が50%未満群は50%以上群に比べ、抑うつ状態が有意に高い結果であったが、その他の心身の状態に有意差はなかった。また50%未満群であってもコレステロール、脂肪エネルギー比率、飽和脂肪酸エネルギー比率など栄養摂取状況が有意に改善しており、セルフモニタリングには記述量よりも意識的に監視し、評価することに意義があると推察された。以上の結果から支援指針を検討した。
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