研究概要 |
急性心筋梗塞患者のデータ収集は,被験者の確保が現在,十分でない.そこで当年度は,地域に在住する中高齢者を中心にデータ収集した.研究当初,高血圧症をもつ人は対象から除外していたが,被験者の中には高血圧症の診断を受けておらず,高血圧を自覚していない被験者が数名含まれた.急性心筋梗塞を発症した患者の中には高血圧を併発している患者も少なくないことから,研究対象者に高血圧患者も含めてデータ収集した.高血圧患者と健常者の循環動態を時系列的に比較すると,高血圧患者のほうが収縮期血圧,拡張期血圧,体温が高かった。脈拍と二重積は高血圧患者および健常者の2群間に有意差はなかった。入浴前との比較では,2群ともに入浴中・後に,脈拍,体温,二重積,収縮期血圧,拡張期血圧が,有意に高かった。経皮的酸素飽和度は1〜3%の範囲内で変動し,2群間に有意差はなかった。心拍変動解析では,LF/HF,HFとも2群間に有意差は認められなかった。入浴前との比較ではLF/HFが,高血圧患者では洗う動作直後のみ有意に高く変動した。健常者ではLF/HF,HFとも2回目の入湯2分間で低下していた。不整脈は,上室性期外収縮が高血圧患者の場合,入浴前に13名中4名,入浴中に6名,入浴後2名,健常者では入浴前に19名中1名,入浴中に3名,入浴後3名に発生した。心室性期外収縮は2群とも入浴前に各1名ずつ発生したが,入浴以後の実験中は観察されなかった。以上の結果から,高血圧患者のほうが1回目の入湯時の収縮期血圧と脈拍,LF/HFが高めであること,上室性期外収縮が多いことから,1回目の入湯は循環動態への影響が大きく,高血圧患者においては特に注意を要する部分であると思われた。また高血圧患者は健常者に比べて,洗う動作や入浴終了後の安静開始時の収縮期血圧が有意に高いことから,入浴時の動作は循環動態に敏感に反映すると推察された。
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