研究概要 |
急性心筋梗塞患者のデータ収集は,17例である。前年度に収集したケースを加えると26例となるが,データの不備もあり使用できるケースは18例で,現在データの整理及び分析中である。ケース中に低血圧にあるForresterIII患者で入浴後に収縮期血圧(以下,SBP)が著しく低下する事例を経験した。このForresterIII患者(以下,事例A)と同I型の患者5名(以下,事例B)を比較し入浴による循環動態の変化を検討した。対象とした6名は冠動脈カテーテル治療(PCI)及び薬物療法を受け,歩行負荷試験,入浴負荷試験に問題はなかった入院患者である。事例Aは54歳の女性,入浴時期は発症後18日目,入浴前の血圧は91/65mmHg,であった。検査データは最大CK:6571IU/L, LVEF:40%,事例Bは平均年齢62.2歳,男:4名,女:1名,入浴時期は発症後平均10日目,入浴前の血圧は平均88/54mmHg,であった。検査データ(平均値)は最大CK:2899IU/L,LVEF:52%であった。 その結果,SBPは2回の出湯直後に事例A,Bとも入浴前より一過性に低下したが,事例Aはさらに入浴後10分経過しても70mmHg台が続いた。一方,事例Bでは80mmHg台に回復した。酸素飽和度と体温は両群とも者着な変動はなかった.自律神経活性ではLF/HFは両群とも出湯時に最も高値を示し,HFは事例Aで1回目の入湯直後が最も高く,その後は事例Bよりも低値で経過した。また,不整脈の出現では心室性期外収縮が事例Aでは入浴甲に1回,事例Bでは5例中2例,上室性不整脈は事例Bのみに2例,不整脈なしが1例であった。 これらのデータから.ForresterIIIの低血圧患者では入浴後の比較的長時間にわたってSBPの回復が遅延する可能性があること考えちれ,こうした患者への入浴指導の重要性が示唆された。
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