研究概要 |
【目的】入浴による循環動態の急激な変動は,心筋梗塞患者にとって動悸,胸痛を起こすリスク要因となる。本研究では,経皮的冠動脈拡張術(PCI)治療を受けた心筋梗塞患者にとって安全な入浴方法を構築することが目的である。【方法】対象者は,患者群は急性心筋梗塞でPCIを受け,フォレスターI・IIあるいはKillipI・IIと診断された入院患者の中から主治医が選択した16名(男性12名,女性4名;61.0±10.0歳)であった。患者16名中10名はβプロッカーを内服していた。対照群は地域から募った健常者19名(男性9名,女性10名;61.0±5.7歳)であった。入浴方法は,ゆっくりとした動作で40度の湯温に15分間の入浴で,被験者は湯船に3分間を2回浸かった。それから,自分で2分30秒間身体を洗った。被験者は座位で入浴前から入浴終了まで(35分間)ホルターECGを記録した。血圧は入浴前,入湯直後,出湯直後,身体を洗った直後,入浴後に測定した。得られたデータは,2群間の比較にMann-Whitney test,入浴前を基準に入浴中,入浴後の比較にwilcoxonの符号付順位検定を用いた。有意水準は5%未満とした。【結果】入浴中に自覚症状を訴えた被験者および2mm以上のST変化2mm,重症不整脈が見られた被験者はいなかった。しかし,患者群でPVCがLown分類でGrad2が3名認められ,入浴前よりも入浴中と入浴後に頻発した。これら3名はLVEFが40%-49%であった。心拍変動のスペクトル解析は,交感神経成分(LF/HF)副交感神経成分(HF)およびRR間隔で2群間に有意差はなかったが,SBPはAMI群のほうが入浴前・中・後で有意に低下した。【結論】湯温40度以下でゆっくりした動作での15分間の入浴は,フォレスター及びkillip分類I,IIと診断されているMI患者の初回入浴として心負荷の少ないことを示した。しかし,PVCがLown分類Grade2が3名に認められたことから,入浴前のPVCが頻発している患者の場合,日常生活でのPVCの観察が重要である。
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