本研究の目的は、手術を受けた肺がん患者が体験する苦痛や無力感を超えて、自己の捉える身体感覚に基づき、生活を拡げていけるようにするための看護援助モデルの開発をすることである。 肺がん術後.患者に面接を行い、手術を受けた肺がん患者が身体感覚をどのように捉え、反応しているのかを明らかにした。肺がん術後患者は、「覚悟に基づく苦痛程度の見極め」「術後に生じた予想外のことへの対処」「回復に向かう感じ」「傷との関係性の変化」「身体の取り戻し」を行っており、手術前に決めた覚悟に基づき、自分自身の身体に生じた現象を注意深く見極め、回復に向けて取り組み、成果を得ていると考えられた。つまり患者は自らの《身体への意識を高め》、置かれた《位置や空間を意識する》中で、身体からわき上がってくる《感覚に焦点を当て》、《その反応を注意深く見る》ことや手術後の身体から発せられる《合図を見分ける》ことで、<資源を動員>し、<機能的能力が高まり>、<苦しいことをコントロール>していける。 また、看護師からは、提供している看護援助として、【身体をアセスメントする】、【危険を回避し回復を促進する】、【安楽をもたらす】、【退院後の生活につなげる】が抽出された。患者の体験理解の重要性は認識されているものの、看護師の見方による情報収集、援助に留まっている現状の課題があると考えられた。 以上の結果を基に、患者の身体の捉えや反応、実際の患者の身体の状態を注意深く見て、患者自身が回復を実感し、それを活力として回復に向けた行動を促進する援助につなげていくための看護援助モデルを作成した。今後.は、フォーカスグループインタビューを実施し、看護援助モデルを洗練化する。そして、モデルの効果や妥当性を検証することにより、肺がん術後患者の生活の拡がりをもたらし、患者のQOLの向上へとつながると考えている。
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