セルフケア能力の質問紙の改訂30項目版(Self-care Agency Questionnaire、以下、SCAQ-30とする)とその使用手順書を用いた「慢性疾患を持つ人のセルフケア能力を高める看護実践」に関する質問紙調査と面接調査を実施してきた。この調査結果を分析し、「慢性疾患をもつ人のセルフケア能力を高める看護実践」の効果と実践内容の中身を検討した。 1.SCAQ-30の得点変化:10組の看護師と慢性疾患をもつ人から回答があり、2回以上の実施ができた7組について、対応のあるt検定を用いて得点の変化を検討した。SCQ-30の総得点の平均は、1回目が101.7点、2回目が135.4点であり、2回目が有意に高かった(p<0.05)。構成概念ごとに平均値の変化を検討した結果、【健康に関心を向ける能力】は1回目が18.6点で2回目が24.0点、【選択する能力】は1回目が15.6点で2回目が22.4点、【体調を整える能力】は1回目が19.9点で2回目が27.3点、【生活の中で続ける能力】は1回目が21.3点で2回目が29.1点、【支援してくれる人をもつ能力】は1回目が21.3点で2回目が32.6点と、すべてが有意に高くなっていた(p<0.05)。以上から、本研究で展開したSCAQ-30と使用手順書を用いた看護実践は、慢性疾患をもつ人のセルフケア能力を高める支援の1つであると考えられた。 2.看護実践の吟味(自由記載内容と面接調査を通して):質問紙調査でSCAQとともに返送された10組分の自由記載、および、同意が得られた4名の看護師に行った面接調査から、看護実践の具体的な中身を質的に分析した。結果、SCAQと使用手順書を用いた「慢性疾患をもつ人のセルフケア能力を高める看護実践」では、【生活エピソードの確認】ができ、【強みを見いだし、必要なことを伝える】【生活にそった具体的な助言】【できそうなことを共に探す】といったセルフケア能力を高める実践が展開されていた。そして、この実践では、【タイミングの見極め】【安心して話せる雰囲気】【的を絞る】という看護師のスキルが必要とされることが明らかになった。
|