研究概要 |
1.不妊・不妊治療女性の気の流れの測定・データ収集:対象者に対し,(1)AMIによる経絡臓器機能の測定,(2)基礎体温測定,(3)質問紙の記入(a.東洋医学的自覚症状70項目,b.女性の体調85項目,c.月経随伴症状(MDQ)47項目)(4)気分や感情の状態評価POMSテスト(6尺度30間)を実施。次に面接でAMIの測定結果(BP値レーダーチャート)を提示し,(1)思い当たること,(2)食事,運動,休養,生活状況,悩み,(3)治療内容,について詳細な聞き取りを行い,個人記録を作成した。2.結果と所見:応募者は未治療4名,治療中4名。そのうち不妊治療を開始した2名について,治療と連動させ2-3日間隔で連続測定した。測定回数は,1名は2周期中13回,1名は4周期中34回,未治療者のうちの2名はほぼ隔週に測定し10周期中17回であった。収集データは全てExcelファイルに入力しデータベースを作成した。その結果,経絡の気の流れの状態を示すBP (Before Polarization)値は,「女子大生」,「不妊女性」,「不妊治療女性」に共通して,肺経,脾経,肝経が高い「共通パターン」がみられ,逸脱所見としてパターンの乱れ,各経絡の低値,左右差・バラツキが大きい所見を得た。不妊女性や冷え性女性はこの逸脱とともに腎経,膀胱経が低く「虚」の証を示した。一方,不妊治療女性は左右差・ばらつきが小さく腎・膀胱経は高値となり「実」の証であった。これらの所見について,電気生理学・臨床鍼灸学の専門家と統合医療セラピストの専門家から助言を受け,看護の診断とケアの観点から検討した。3.結論:気の流れ,すなわちBP値の所見から,不妊治療女性はホルモン治療により人工的に下半身の生殖器系は「実」の状態にあり,上半身とのアンバランスが大きく,心経や心包経の低下は気分の落ち込みやうつ,脾経や胃経の低下は食生活や栄養の低下を誘引し,心身の調和を乱す状態にあるという見たてが導かれた。これらの滞りを解消し,気の流れを促すケア,東洋医学的アプローチによる指導の適用可能性が示唆され看護の処方への方向づけが得られた。
|