研究分担者 |
小坂 浩隆 福井大学, 医学部附属病院, 助教 (70401966)
中井 昭夫 福井大学, 医学部, 助教 (50240784)
松木 健一 福井大学, 教育地域科学部, 教授 (10157282)
波崎 由美子 福井大学, 医学部, 助教 (80377449)
田邊 美智子 福井大学, 医学部, 教授 (80227199)
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研究概要 |
平成20年度は,既収集データ(青年期体験群)と比較するために対照群(青年期非体験群・母親群・父親群)のデータ収集・分析を行った。方法は,親性育成状況を評価するために質問紙調査,親性を刺激する乳児の笑い・泣き場面の映像を提示し,各反応を評価した。その結果,以下のことが明らかとなった。1)青年期体験群(19名)と非体験群(20名)の比較:心理学的評価(親性準備性尺度),生理学的評価(心拍パワースペクトル)とも青年期体験群では青年期非体験群より有意な変化がみられ,親性育成効果がみられた。内分泌学的評価(唾液アミラーゼ)においては,事例による変化の違いはみられたが両群とも有意な変化はみられなかった。脳科学的評価(fMRI)では乳児の泣き場面を提示した結果,聴覚刺激だけのセッションにおいて,青年期体験群では青年期非体験群より両側中前頭回,両側下前頭回,両側内側前頭回,両側前部帯状回が体験後強く賦活した。すなわち,これらが学習効果による親性育成領域と考えられた。2)青年期女性群(20名)と育児中の母親群(26名),青年期男性群(19名)と育児中の父親群(22名)の比較:脳科学的評価においては聴覚刺激だけのセッションで,どちらも差がみられなかった。しかし,聴覚と視覚刺激のセッションにおいて,青年期女性群では両側扁桃体,左側上前頭回,左側側頭葉(視覚野),右側側頭体(聴覚野)が母親群より賦活していた。母親に特別な脳賦活はみられず,むしろ青年期女性は乳児の泣き声に不安を抱いていたことが推察された。3)母親群と父親群の比較:母親群が父親群より賦活している部位はみられなかった。しかし,父親群では母親群より低い統計閾値(uncorrected, P<0.001)ではあったが,左下前頭回,左内側前頭葉,右上側頭溝の賦活がみられた。つまりこれらの部位が父親の共感性に関与していることが推察された。 平成21年度は親性の低い青年期男女に学習プログラムを実施し,これらのデータと比較検討予定である。
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