[目的]妊娠・出産により女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)のバランスは大きく変化する。このホルモンの変化は視床下部の自律神経の働きにも影響を及ぼし、ホルモンのバランスが不安定になると、それにつられて自律神経のバランスも不安定になる。さらに産後は、育児に伴う疲労の蓄積、睡眠不足や精神的ストレスにより自律神経活動は不安定になる。 [方法]定期的に健診を受診し、妊娠経過は正常で合併症のない妊婦を対象として妊娠初期から産後12ヶ月の期間、縦断的に心電図(R-R間隔)を測定した。さらに、健康状態(HAD;不安・抑うつ、GHQ)、気分(POMS)、生活習慣(睡眠状態)、血圧、体重、体脂肪率を測定した。 [結果]自律神経活動動態は、まず、CM5誘導の心電図を多チャンネル生体アンプで増幅し、1024HzでA/D変換を行った。次に、R-R間隔を2Hzの時系列データに変換し、高速フーリエ変換を行い、心拍変動中に含まれる周期成分の周波数とその強さ(パワー)を算出した。得られたパワースペクトル(周波数とパワーとの関係で表す曲線)から、低周波成分<LF0.035~0.15Hz)と高周波成分(HF : 0.15~0.4Hz)の2つの周波数帯域に加え、超低周波成分(VLF : 0.007~0.035Hz)を定量化し、(VLF+LF)/HF比を交感神経活動指標(SNS Index)、HF/Total比を副交感神経活動指標(PNS Index)とした。PNS Indexの産後1週の平均0.48、1ヶ月0.34、4ヶ月.45 SNS Indexは1週1.21、1ヶ月2.44、4ヶ月1.52であった。体脂肪率は1週27.5%、1ケ月29.0%、4ケ月29.3%、筋肉量1週38.6、1ヶ月35.6、4ヶ月35.0、BMIは1週22.9、1ヶ月21.5、4ヶ月21.1であった。産後の体脂肪率の増加と筋肉量の減少、交感神経活動の上昇が明らかにされた。
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