最初に埼玉医科大学保健医療学部および総合医療センターの、両倫理審査委員会の承諾を得た。その後、総合病院産科外来および産院、産科クリニック等の計7施設の妊娠初期の妊婦478名を対象に、調査の説明書と同意書、1回目の質問紙等一式を、外来受診時か母親学級参加時に手渡し、調査協力を依頼した(以降の質問紙配布・回収は郵送にて)。質問紙の内容は属性、SOCおよびEuroQol等の尺度であり、質問紙の記入時期は妊娠初期、後期、出産後5日以内、1ヶ月、4ヶ月、1年の計6回であったが、現段階にて妊娠期の記入終了者は258名である。それらの結果を分析した結果、SOC平均得点は1回目59.6点、2回目57.6点であり、EuroQol得点の平均効用値は1回目0.839、2回目0.793、視覚評価法は1回目69.8、2回目70.2であった。いずれも、対応のあるt検定にて2時点の得点間に有意差は認められなかった。SOCとEuroQol得点、および妊娠回数、年齢等との関連に関しては、妊娠初期のSOC得点が同時点のEuroQol得点、妊娠後期のSOC得点とEuroQol得点、さらに、妊娠回数と妊娠月数と有意な相関を示し、初期のSOCが高い者ほど後期のそれも高く、QOLも高かった。また、妊娠回数が多い者ほどQOLは低く、妊娠月数に関しては、前半では月数が多いほどQOLは高く、後半においては月数が少ないほどQOLは低かった。 以上より、妊婦のSOC得点は一般人口よりも高い傾向、特に、妊娠初期よりSOCが高くなりそれが後期まで維持される可能性が示唆された。そして、SOCが高いほどQOLは高かったものの、QOLが妊娠月数および妊娠回数と有意な関連を示したのに対し、SOCは関連を示さなかったことから、SOCはQOL以上に安定した特性であること、しかしそれが妊娠というイベントによって大きく影響される可能性が示唆された。
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