本研究では、双生児とその母親との関係性の形成過程について縦断的調査を実施し、母子関係形成プロセスの特徴と構造を明らかにし、その関係性を促進あるいは阻害する因子を探索し、良好な母子関係形成を促進するための介入の示唆を得たいと考えている。本研究は、事例研究を中心とした縦断的調査を行っている。1~12カ月までの追跡結果を途中経過として報告する。母親のGHQについては、生後1カ月の時点で、身体的症状、不安・気分変調、睡眠障害がみられ、3カ月の時点では身体的症状が軽度みられるのみと改善したが、12カ月では一般的疾患傾向が顕著に現れ、身体症状も変わらず軽度見られていた。母性意識は1カ月時点と比較して、3カ月以降は肯定的な点数が高くなり、否定的な点数は低くなってきている。一方で育児困難感の点数は3カ月で低値となったが、12カ月では上昇がみられている。母親の自尊感情には大きな変動は見られなかった。母親は生後間もなくから2人の特徴を把握しており、月齢が進むごとにより具体的に表現をするようになっている。子どもとの関係性は、双生児間での偏りが3カ月頃から見られ始め、9カ月ではその差は少なくなるが、双生児間で逆転することはなかった。育児上の関わりとしては、3カ月になると違いを認識してそれぞれの子どもに合った方法を見出して関わるようになるが、12カ月では関わり方に違いが生じることは少なくなり、「寝かせるとき」「泣いている時」にそれぞれの子どもに合った方法で育児を行っていた。子どもの成長発達と共に、育児に慣れ、育児を楽しむようになってきているが、一方で成長発達に合わせて育児が変化してくることに伴い、母親の中で様々な感情が出現してくることも見出せた。今後も継続して調査を続けていく。
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